近年、健康食品通販において、新規参入はEC(インターネット通販)が中心となっているには、理由があります。

低予算から始めることができる
CPAなどが低い
若い世代や他業種が参入しやすい


一方、そこにも落とし穴があります。
CPA(コンバージョン1件あたりにかかった広告費用を示す値)などと表現した理由は、そこにあります。

基本、インターネット系の広告媒体は、リピート率が低いです。アフィリエイト広告から得られた顧客は、ほんと、定期購入で縛らないとリピートしないです。
結果、LTVというものまで評価すると、見かけだけ広告費用対効果がよく見せやすい点が理解できます。

広告媒体によって、LTVまで含めた広告費用対効果は異なります。
広告媒体によって、閲覧している顧客層の質(年齢、性別、所得など)が異なるからです。

昨日、広告費用対効果を的確かつ厳しく評価できる人材の育成が重要と述べましたが、その人材は、LTVまで加味した広告費用対効果を評価できる必要があるのです。
今の健康食品通販の本質は、リピート購入してもらえないと利益が出ないというものです。
私の通販方程式の記事を見れば、一目瞭然なんですけどね・・・。

他力本願になり、きちんとした評価ができる人材が育成されていなければ、先日も紹介しましたが、メディア周辺しか儲からず、広告主だけが広告費を垂れ流すような事象がたくさん起こってきます。リピート率やLTVを加味すると、どれだけ投資しても広告費が回収できないモデルが導き出されます。

そこで生まれたのが定期縛りという手法です。
騙してでも消費者を定期購入コースに縛り付けることで、リピート購入を確定させることが可能となります。
一方、そこに目を付けたメディアやアフィリエイターは、定期縛りも加味した成果報酬を要求するようになりました。
それで、ECは販売者(広告主)にとって儲からない市場へと変貌させたのです。
(こういった状況は進み、昨今は、広告主も減り、自分で自分の首を絞めたアフィリエイト広告の現状が存在します。広告で儲からないので、販売を始めるアフィリエイト管理会社も増えてきました。)

今、新規参入がECに集中したため、紙媒体など旧媒体の広告費用対効果が復活し始めているようにも感じられます。
どんな商品、どんな媒体で勝負するかは、そういった市場動向も見極めながら決定できると、勝てる確率も高くなるんだろうなぁと思います。

実際問題、大きく成功するためには、電波媒体で勝っていけることが最終目標の1つだと思います。
電波媒体は、各種媒体とクロスメディアによる相乗効果が高い媒体でもあるので、いろいろな媒体で展開しながら、攻めていくことが必勝パターンだと思います。
近年は、ECとの相乗性も強くなってきています。

一方、このクロスメディアも含めた広告費用対効果の評価というのは、一番難しいものだと思います。
残念ながら、私もできません。
厳密に評価しようとすると、寄与する要因が複雑に絡み合う多変量解析になってしまうでしょう。
ただし、通販神話の時代:約15年前、おそらく日本でも初めてに近いと思いますが、女性誌広告のECでの刈り取り(3000万円の広告費で7000万円の回収)というものを経験しているので、クロスメディアの重要性は身をもって知っております。
通販会社の広告費用対効果を評価できる人材は、その道のプロです。最終目標は、ここのレベルにあるのだと思います。たとえ、感覚的なものであっても。

なぜ、こういった不毛な販売が続くのか?
それは、儲かる提案しかされないから。

提案時のシミュレーションの際、CPAや広告予算、獲得件数などに加え、リピート率や離脱率を組み込んで収支計画が組まれます。ほぼ、このリピート率や離脱率の部分がズレてきます。だって、提案では、黒字にしかならないシミュレーション結果しか提示されませんから・・・。
そんなシミュレーション、全く意味がない。
リピート率や離脱率は、簡単ではない。商品や追っかけ方、さらに競合状況によっても変化してきます。
広告予算を通すためだけ、形だけのシュミレーションは、全く参考にならないです。

弊社は明言しているのですが、実際、我々OEM会社は、1つの商品を何度もリピート発注してもらえないと利益は出ません。営業経費を加味すると、初回の供給は、トントンもしくは赤字です。
顧客の成功があって初めて、我々の成功が存在します。
ぶっちゃけ、赤字でもサンプルを配りまくってくれる顧客は一番おいしいのですが、遅かれ早かれ事業撤退になってしまうので、我々が望むような成功には至らないです。

現状、消費者を騙してゴミ商品を売りつける商法が盛んに行われていますが、LTVというものを加味して評価すると、最終的に利益は出るのでしょうか? おそらく、出ないでしょう。ほんと、メディア周辺だけが儲かります。
また、そういった商法により健康食品市場というものが消費者を騙す市場と評価され、いつまで経っても支持されないという状況を招いてしまいます。健康食品事業の先には、社会貢献性のビジョンが必要なのです。利益追求だけではダメなのです。

まぁ、バラされて困ることを紹介したり、痛いところを突いたりするので、私の情報発信を好ましく思わない方々も存在するでしょう。

我々は、作り手側からでも、理想とする健康食品市場を作っていくため、努力し続ける必要があると思います。
そのため、私は、情報を発信し続けるのだと思います。
これからも、情報を発信し続けようと思います。

この記事の筆者:栗山 雄司 (博士)

株式会社アンチエイジング・プロ 常務取締役 COO / SloIron Inc. 取締役 技術アドバイザー / 順天堂大学医学部 総合診療科 研究員

kuri photoM2 広告にも精通し、日々、売れる商品(;顧客の成功)のことを考え、健康食品サプリメントの機能性原料開発やOME製造を行っています。