以前から、適正原価率については、いろいろ述べさせていただいております。
そして、この適正原価率というのは、メイン素材の成熟度(ライフサイクル)によって変化します。

まず、この点について、具体的に紹介したいと思います。

導入期や成長期初期の素材は、ぶっちゃけ、市場価格が定まっていないので、適正原価率は高めです。
値段を付けた者勝ち。
もはや神話となっている原価率15%前後でも、市場は構築できます。通販市場の導入期や成長初期までは、多くの素材で、成り立っていました。
その価格で、市場を創造し、それなりに収益性が得られるようになることが第一ミッション。

独自素材で、他社が真似できな商品開発ほど、この状態が維持できます。
サントリーのセサミンなどは、随分、長く維持できました。

次の段階。
素材が成長期後期になって来ると、収益性が得られることがバレ始めます。
そうなって来ると、模倣品(コピー商品)が増え始めます。
模倣品は、先発商品との差別化で、安い価格で販売されるケースが多いです。販売価格が下がるため、当然ながら、適正原価率は上がります。
適正な原価率は20~30%くらいにまで変化してきます。

最後の段階、成熟期。
量販店に出回るので、原価率は、30~40%というは当たり前の世界になります。
適正原価率は、ガクンと上がります!
この上がり方によって、先発品の多くは潰されます。
安売り合戦スタート。
通販会社さんは、この商材から手を引き始めます。

EC(イーコマース)で販売される健康食品素材は、この変化が速いです。なかでも、添加物系の素材は、特に速いです。
なので、市場が大きく成り切る前に成熟期に至ってしまうケースもあります。
例えば、HMBカルシウム。
昨年の初夏から売れ始め、今年の春にピーク。
初夏には、量販店に並び始める。完全に価格破壊です。

繰り返しますが、このご時世(健康食品業界の成熟期)、素材のライフサイクルの変化は非常に速いです。そういった変化を認識しながら、価格戦略を含めた商品開発を的確に行っていく必要があるのです。
適正原価率を間違えると、商品は売れません。
だからと言って、安くし過ぎると、広告費がペイできなくなります。


正直、私は、広告関係の方と意見が合わないことも多々あります。
広告側としては、少しでも原価率を下げた事業計画で、追加で投じれる広告予算を確保したいという意図が生じます。
当然です。よく理解できます。
私自身、広告代理店に所属していたので、製造側の誰よりも理解していると思います。
そして、通販業界の導入期に、適正原価率15%という神話が生まれました。
一方、時代は変わり、商品のライフサイクルによって適正原価率は変化します。何度も何度も、繰り返します。私は、その点を主張したいのです。
あくまで、販売会社さんの視点で中立のつもりです。

どうしても適正原価率15%を長く保ちたいのであれば、他社に真似されない商品を作るため、原料開発からの商品開発を行う必要があるのです。
広告予算に1000万円投じる前に、原料開発に300万円投じた方が正解というケースも多々あるでしょう。

最終的には、ヒト臨床試験&論文化まで。
今後は、そういった真似のできない事業を積極的に構築していきたいものです。

この記事の筆者:栗山 雄司 (博士)

株式会社アンチエイジング・プロ 常務取締役 COO / SloIron Inc. 取締役 技術アドバイザー / 順天堂大学医学部 総合診療科 研究員

kuri photoM2 広告にも精通し、日々、売れる商品(;顧客の成功)のことを考え、健康食品サプリメントの機能性原料開発やOME製造を行っています。