今回、改めて展示会でアメリカ市場に触れ感じたことがたくさんあります。まず、アメリカの市場は、日本の市場とは明らかに異なる方向で成長した市場であることです。
したがって、参考になる部分とならない部分があります。

例えば、テレビを見ていても、サプリメントのテレビCMは、量のクリエイティブ表現がストレートに行われています。サプリメントに限らず、医薬品でも同様です。
「◯◯が◯mg配合されており、◯%改善効果が示されている」など、とにかくストレートな表現です。
ダイエット商品などは、BMI◯以上の被験者の内◯%の人が平均◯◯痩せたとまで、詳しく表現していました。
こういった表現が数年前より加速した感じがします。

ちなみに、ビタミンやミネラルなどは、効果が知られているためか、品質面しかアピールされていなかったです。

広告考査の違いもあると思いますが、基本、消費者がこういった情報を望むから、こういったクリエイティブになるんだろうと思いました。
そして、このようになるのは、両国における制度が明らかに違うためでしょう。

本年4月、日本でも機能性表示制度が施行されましたが、私は、アメリカの機能性表示制度とは全く異質のものであり、本質的なものが異なると思います。
まあ、消費者庁は、同じものを作るつもりがなかった訳ですから、当然でしょう。

アメリカには、代表的な2つの栄養補助食品(サプリメント)に関する法律が存在します。

・栄養表示教育法(NLEA)1990年
・栄養補助食品健康教育法(DSHEA)1994年

これらに機能性表示などの制度が追随する形になっています。

参考&詳細
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/04/s0423-6b9.html

この名前を見ていただいてわかると思うのですが、あくまで教育法なのです。
消費者が自己責任で選択して自己防衛できるための教育法なのです。アメリカは国民皆保険がない国であるから、このようになるのでしょう。

こういった背景より、しっかりと栄養学の教育水準が上がると、機能性関与成分を有効量摂取しないと意味がないという概念が根付きます。期待される効果に対してシビアにもなります。
(アメリカでは数のクリエイティブが行われない理由です。日本には、数のクリエイティブだけで成り立つ、アメリカ人からするとナンセンスな商品が多数存在します。)

日本の機能性表示制度は、どこかが機能性と安全性を担保し、それを国民が選択する制度であり、国民が栄養学について学ぶ要素が含まれていないです。
今回、結局、企業責任だったのに、いつの間にか、審査基準があるような国の認定制度みたいになってしまっています。

なので、アメリカのサプリメント原料市場では、ヒト臨床試験のデータが命です。特に抽出物の場合、ないと、話になりません。
毎回、アメリカの展示会に参加する度、痛切に感じます。
一方、添加物系の純ピンの原料の場合、成分でデータがあれば十分です。

そうなると、こういった市場では、どうしても添加物系の原料で価格競争も激化し易く、コスト勝負の中国原料が有利です。実際、今回も、アメリカの展示会なのに、8割は中国産原料のように感じられました。含有量あたりのコスパだけの勝負になり易く、中国産原料だらけになってしまうデメリットはありますが、日本のように偽物商品が横行することも少ないというメリットにもなります。まあ、多少なりとも日本にも必要な要素だと思います。

まあ、教育という手法や概念が異なりますので、日本はアメリカの市場のようにはなりません。皮肉なものですが、皆保険制度がしっかりしていればしている程、教育は根付かないでしょう。

その違いを認識しつつ、米国の市場を分析し、日本での戦略を講じるべきだと思います。
私も、常にベストな戦略を講じて行きたいと思います。

この記事の筆者:栗山 雄司 (博士)

株式会社アンチエイジング・プロ 常務取締役 COO / SloIron Inc. 取締役 技術アドバイザー / 順天堂大学医学部 総合診療科 研究員

kuri photoM2 広告にも精通し、日々、売れる商品(;顧客の成功)のことを考え、健康食品サプリメントの機能性原料開発やOME製造を行っています。